県内の二次保健医療圏は、昭和62年に13圏域に設定されていましたが、市町村合併、人口減、交通事情の変化、医療技術の高度化・専門化等に伴う見直しにより、平成18年に7圏域に再編されました。
「第4次新潟県地域保健医療計画」に示されているように、二次保健医療圏域における療養病床及び一般病床の基準病床数と既存病床数を比較すると、県内他の圏域ではほぼ一致している中で、新潟圏域が基準病床数を3,658床超えている一方、佐渡圏域では251床不足しています。このことは新潟県に限らず、全国的な傾向として、医師をはじめ看護スタッフや医療設備等を含めた医療サービスが、首都圏と過疎地、へき地、離島では明らかに格差が大きいことを表しています。国及び県の施策も、これらの解消が急務と思われますし、佐渡市もこの不足分を解消するため、中・長期的対策を設けて検討しなければなりません。
また、高齢化が進展する中、高齢者が医療機関を利用しやすくするため、交通アクセスの整備を進めなければなりません。
(1)公的病院、私立病院の役割
1. 佐渡総合病院
佐渡総合病院は佐渡市の中心部に位置し病床数422床(一般病床418床、感染症病床4床)、診療科目22科を持ち、佐渡市で唯一大きな手術のできる公的病院です。さらには、災害時の患者受け入れに必要な医薬品や医療備蓄等を配備した災害拠点病院に指定されていますし、災害時の急性期において機動的に活動できるようトレーニングを受けた災害派遣医療チーム(DMAT)が配備されており、今後も引き続き災害時医療を担っていきます。
- 注釈
- 災害拠点病院
- 災害時に多発する重篤救急患者の救命医療を行うための拠点施設として知事が指定した病院。原則として二次医療圏ごとに指定する「地域災害医療センター」及びその機能をさらに強化し災害時医療についての研修機能を併せ持つ「基幹災害医療センター」の総称。
- 災害派遣医療チーム(DMAT)
- 災害の急性期に可及的早期に救出・救助部と合同し、活動できるトレーニングを受け、機動性を持った医療チーム。
また、佐渡市における急性期医療の大部分を担っており、救急医療に至っては島内件数の7割を担う、へき地医療拠点病院です。
さらに医療人材確保のため、管理型臨床研修病院及び、新潟大学医歯学総合病院協力型臨床研修病院として研修医の育成に務めているほか、佐渡看護専門学校を設立して、看護師の養成も行っています。
この佐渡総合病院に寄せる市民の期待は大きく、島内完結型医療が望まれている現状を考えると、佐渡総合病院を佐渡市の中核病院と位置づけ、市立病院では行えない医療に係る高度医療機器や施設整備に対して、可能な範囲で支援協力を行う必要があります。
2. 真野みずほ病院
島内唯一の精神科を有し、病床数158床(精神病床)を持つ病院で精神科を中心として内科、皮膚科、耳鼻咽喉科の診療を行います。しかし入院患者の中には退院後の受け入れ施設がないため、長期入院を余儀なくされているケースも多く、新しい患者の受け入れが困難になっています。このため、グループホーム等の受け入れ施設の整備が急務となっています。また、高齢化の進行により、今後増加が予想される認知症患者に対応するための検討が必要です。
- 注釈
- グループホーム
- 障害者が日常生活の援助を受けながら共同生活を行い、地域において自立生活していくための暮らしの場。
3. 羽茂病院
医療療養型と介護療養型の病床数45床(療養病床41床、介護病床4床)〔平成18年12月より一般病床45床に変更〕を持ち、内科、外科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科の診療を行います。また、特別養護老人ホーム「はもちの里」の後方病院として、島内南部地域の医療、福祉の拠点病院として位置づけていきます。
4. 佐和田病院
島内の人口密集地の立地条件を生かした多科目(内科、外科、整形外科、歯科、リハビリテーション科等)の診療を行います。病床数は34床(一般病床15床、療養病床19床)〔平成18年10月より療養病床34床に変更〕と小規模ながら急性期から慢性期までの診療を幅広く担っていきます。
5. その他医療機関
佐渡市には「医療施設等の状況」で述べたとおり、六つの病院のほか、一次医療機能として一般診療所が41施設(医師が常駐するのは22施設)、歯科診療所が27施設ありますが、それぞれ地域のかかりつけ医としての役割を担っていき、患者の病状によっては病院と診療所の連携のもと、後方病院であるこれらの病院への入転院をしていきます。
- 注釈
- 一次医療
- 外来治療を中心とした日常的で頻度の高い医療。(主として診療所による)
- かかりつけ医
- 病気の治療や健康相談などに応じてくれる身近な診療所等の医師のこと。
(2)市立病院の役割
1. 市立病院の方向性
これまで、両津・相川の両市立病院は旧来の市民病院、町立病院の体制を継続していますが、両病院とも相次ぐ診療報酬の改定や長期入院患者の増加等で経営は非常に厳しい状況にあります。
しかし、両津病院は佐渡東部地域唯一の病院であり、へき地医療と救急医療の充実、地域保健や福祉への影響等を考えると、当面は医師確保や経営改善等に努めながら現状の一般病院としての運営を行わなければならないと考えますし、相川病院は佐渡北部地域の中核病院であり、地域の保健事業や福祉施設への影響、また地域が佐渡観光の中心であることや超高齢化が進んでいること等を考えると療養型病院として存続させなければならないと考えます。しかし、全国的にも医師及び医療スタッフが都市部に集中し、過疎地、離島、へき地では不足しています。佐渡市においても同様に医療の偏在化が生じており、市民が等しく医療を受けられる状況が求められています。
しかし、このような中でも、島内医療施設の効率的な運営を考えると、市立病院といえども改革の波は避けて通れず、当計画5か年間の内に、公設民営化、独立行政法人化等、経営移譲も視野に入れた検討を佐渡市立病院運営委員会を中心にして行います。
また、個々に管理運営してきた資源、施設についてもお互いに共有し、共通管理することでコストの軽減、在庫物品等の減少による効率的な運用を行うとともに、安全な薬の利用と医療費の適正化を図るため、医薬分業についても総合的に検討を進めます。
2. 両津病院
ア. 複合型施設(包括ケアユニット)の構築
両津地区にある市立両津病院、すこやか両津、歌代の里は、それぞれ一般病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホームとして運営していますが、本来は諸先輩の英知と努力によって、より効率的運営を念頭に併設施設の形をとって建設されたものです。
しかし、現在管轄分野が異なるため、これらの施設は充分に連携されておらず、その真価が発揮されていないのが現状です。
これら併設施設の効率的な運営を図るには、管理分野の枠組みを取り外し、流動的な人事交流や資源の効率的活用を図り、地域医療・福祉の中心拠点としての機能を発揮し、市民に、より安心・安全な医療・福祉を提供できるようにしなければなりません。そのため、当計画期間内に諸問題の調整を行い完成を目指します。
- 注釈
- 包括ケアユニット
- 介護老人保健施設や介護老人福祉施設を包括して小規模なケアを施す。
イ. 地域医療教育の充実
平成16年度に始まった臨床研修医制度により、医学部卒業後2年目の研修医が地域医療と地域保健研修のために両津病院と佐渡保健所を訪れています。2年目の医師が、たとえ研修であっても地域医療研修に訪れたことはあまり例がなく、平成17年度の実績でも各研修医に好印象を与えることに成功しています。
これらのことは、将来的に医師の地域医療への認識を変革させることができるだけでなく、直接的に市立病院へ勤める医師を確保することにつながる可能性を秘めています。また、これらの事業は各職員の意識改革や活性化も促しました。そのため佐渡市としては、率先して地域医療教育に力を注ぎ、より多くの研修医を受け入れるとともに、充実した研修を提供し、地域医療及び地域医療研修の先進地を目指します。具体的には、多くの研修医を受け入れる体制の確立、よりよい研修プログラムの策定や、研修医の派遣元である医科総合診療部が研修の拠点となって、中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成を進めている新潟大学医歯学総合病院をはじめ、新潟市民病院、並びに佐渡総合病院との協調、地域医療学教室を有する自治医科大学等との連携により進めていきます。
- 注釈
- 臨床研修医制度
- 平成16年4月の医師法の改正により導入された制度で、診療に従事しようとする医師について、医学を履修する課程をおく大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、二年以上の臨床研修を受けることを義務化したもの。
3. 相川病院
国の医療制度改革は、介護療養型医療施設を平成24年3月末までに廃止する措置が盛り込まれています。相川病院には25床の介護病床があり、これの転換について検討しなければなりません。
- 注釈
- 介護療養型医療施設
- 介護保険の給付対象施設の一つ。長期にわたり療養を必要とする患者のための病床を有する病院・診療所で、療養上の管理、看護、医学的管理下における介護等の世話、機能訓練等の必要な医療を行う施設。
ア. 療養型病院の維持
相川病院の現状は、医師、看護師、医療技術者等が充足率を満たしており、当該地域の拠点病院として、救急、内科、外科外来患者の診察と58床の入院施設で運営しています。そして、特別養護老人ホーム「大浦の里」、介護老人保健施設「相川愛広苑」等の後方病院としての役割を考慮すると、病院機能を有した医療施設が必要となり、療養型病院を維持します。
イ. 介護病床の廃止と療養病床への転換
介護療養病床の全廃措置を受け、相川病院は「第4次新潟県地域保健医療計画」及び「佐渡市高齢者保健福祉計画・第3期介護保険事業計画」等との整合性を図るとともに、関係機関、福祉施設、及び患者家族の理解を求めながら、介護病床を廃止し、それに伴い訪問看護サービスを充実させるとともに、末期症状となっている患者が安らかな余生を送れるような、終末期医療に対応できる医療型療養病院を目指します。
また厚生労働省では、今後毎年診療報酬の見直しを行う方針をたてていますが、平成18年4月1日改定の診療報酬を検証すると、医療必要度に応じた報酬体系となっているため、医療必要度の高い患者をはじめ、利用するすべての患者や家族から信頼される病院を目指します。
(3)病院機能の明確化、連携、機能強化
佐渡市は離島という地理的条件の中で、他の医療圏域とは海で隔離されており、特に冬期間は船舶の航行が遮断されることも多いことから、佐渡地域保健医療圏域内での完結型医療が求められています。
このため、当圏域では行政と医療機関、また医療機関同士の連携や役割分担が重要な課題となっています。
1. 病病・病診連携について
現在、医師による紹介や診療上の情報交換などの連携は個別に行われています。しかし、高齢化が最も進んでいる地域のため、多科受診が必要な高齢者がますます増加しており、病院と病院、病院と診療所での患者紹介を推進する部署の設置についても検討しなければなりません。
2. 病院の役割分担と連携機能の強化
新潟県の地域保健医療計画で県内は7つの二次保健医療圏に分類され、佐渡市はその中で単独の二次保健医療圏に指定されています。そこで、一次及び二次保健医療圏域である島内の一般診療所、歯科診療所、私立病院、公的病院、市立病院がそれぞれの特性を生かしながら情報交換会や研修会等を行い、島内医療機関のネットワーク、機能強化を推進し、住民が安心して受診できる医療体制を構築しなければなりません。
二次保健医療圏
- 注釈
- 平成18年4月1日現在
圏域 | 構成市町村数 | 人口 (人) | 面積 (平方キロ メートル) | 構成市町村名 |
---|---|---|---|---|
下越 | 10 (3市3町4村) | 229,106 | 2,319.70 | 村上市、新発田市、胎内市、関川村、 荒川町、神林村、朝日村、 山北町、栗島浦村、聖籠町 |
新潟 | 4 (3市1町) | 932,555 | 2,223.57 | 新潟市、阿賀野市、五泉市、阿賀町 |
県央 | 6 (4市1町1村) | 284,076 | 811.52 | 三条市、加茂市、燕市、見附市、 弥彦村、田上町 |
中越 | 4 (2市1町1村) | 388,016 | 1,354.24 | 長岡市、柏崎市、出雲崎町、刈羽村 |
魚沼 | 7 (4市3町) | 234,563 | 2,854.10 | 小千谷市、魚沼市、南魚沼市、 十日町市、川口町、湯沢町、 津南町 |
上越 | 3 (3市) | 295,757 | 2,165.08 | 上越市、妙高市、糸魚川市 |
佐渡 | 1 (1市) | 67,386 | 855.11 | 佐渡市 |
合計 | 35 (20市9町6村) | 2,431,459 | 12,583.32 |
- 注釈
- 平成17年10月1日現在「平成17年国勢調査第1次基本集計結果」より
3. 住民への医療供給情報の提供
医療機関の医療提供体制の現状、課題及び整備方針等を広く住民に情報提供し、受診時の手助けとなるよう務めます。
(4)医薬分業の推進
佐渡市は県内で薬局数の人口10万対率が最も低い地域で、一部を除いてかかりつけ薬局が定着しておらず、最も医薬分業が遅れている地域です。
医薬分業のメリットは、かかりつけ薬局で個人ごとの薬に関する記録を保管することによって、薬の過剰投与や薬害を未然に防止し、より安全な薬の利用と医療費の適正化が図れる等がありますが、一方患者の負担増や薬局の設置場所によっては、患者の利便性を欠くことにもなり、これらを総合的に検討しながら普及啓発に努めます。
- 注釈
- かかりつけ薬局
- 特定の個人が、どの医療機関で処方せんをもらっても、その処方せんを必ず持って行って薬の調剤を受けると決めた薬局。
- 医薬分業
- 病気になり医師の診断を受けた際に、病院・診療所で薬をもらう代わりに処方せんをもらい、その処方せんに基づいて街の保険薬局で薬を調剤してもらう制度。