本文
本ページの目次
令和4年第2回(3月)佐渡市議会定例会の開会に当たり、佐渡市教育委員会所管に関する教育行政方針について申し述べさせていただきます。
皆さまのご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
近年佐渡市においては、人口減少や高齢化社会の進行による家族形態の変容、家庭と地域の教育力の低下、いじめ・不登校の問題、ICTの急速な進展への対応など様々な課題があります。このような急速に変化し予測困難な社会において、子どもたちが自立的に生き、社会の形成に参画するために求められる資質・能力をより一層確実に育成するため、教育の果たす役割は極めて重要であります。
また、多くの市民が生涯にわたって学べるよう、様々な学習機会を充実させるとともに、学んだ成果を地域の諸課題の解決に活用できる学習環境の実現が求められています。
令和3年度においてもコロナ禍により、多くの制限を受けながらも教育大綱及び教育振興基本計画のもと教育施策を進めてまいりました。その中で明らかになった課題を受け、令和4年度の方針について説明いたします。
「施策1 学ぶ意欲を高め確かな学力を育成する教育」として、学力等に関する各種調査結果をもとに、佐渡市及び各小中学校における学力・学習習慣・生活実態等に係る課題を解明し、その解決を目指します。合わせて、ICT活用支援、教員研修の充実に重点的に取り組みます。
令和3年度は佐渡市においても、文部科学省Gigaスクール構想等に基づきすべての小中学校で、一人一台端末を活用した授業が実施され、ほとんどの学校で端末を家庭へ持ち帰っての家庭学習が始まりました。
令和4年度はさらに、大型提示装置の全教室配置やデジタル教科書の使用など、学校ICT環境の充実と効果的活用を推進し、児童生徒一人一人に合った個別最適な学びが保障されるよう新潟県教育委員会、市内小中学校長会や小中学校PTA連合会等と連携して取り組みます。
また、各校における「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善を推進するために、佐渡総合教育センター主催の研修を引き続き充実させるとともに、指導主事が全小中学校に訪問し、授業参観・指導を行う「学校支援訪問」を実施し、教員の授業力向上を目指します。
併せて、小中学校における教育の質的向上を図るため、校務支援システムの導入を進めます。児童生徒の成績管理や健康管理など、多岐にわたる校務情報を一元的に集約、共有し、校務処理を効率的かつ効果的に行い、教員の業務負担の軽減を図るとともに、校務処理に要する時間が短縮されることによって、教員の教材研究のための時間や教員が児童生徒と向き合う時間を確保し、よりきめ細やかな学習指導や生活指導に取り組みます。
「施策2 豊かな心、倫理観、規範意識をはぐくむ道徳教育」として、特別の教科「道徳」において「考え、議論する道徳」の定着を図り、学校でのいじめ見逃しゼロ等を目指します。
また、佐渡総合教育センター主催「道徳授業に関する研修」「人権教育、同和教育研修」を行い、市の課題や実態を踏まえた指導法等の研修を行います。合わせて、佐渡人権展に引き続き参加し、人権意識の育成に努めます。
「施策3 健康でたくましい心身をはぐくむ教育」として、令和3年度体力テストの結果から市内児童生徒の課題を明らかにしたうえで、「1学校1取組」を支援し、コロナ禍での低下が心配される児童生徒の体力向上に取り組みます。
望ましい食習慣形成のために、各校の食育指導への支援を充実するとともに、佐渡の食材による地産地消を推進しながら安全な学校給食の提供に努めます。
「施策4 一人一人の教育的ニーズに応える特別支援教育」として、関係機関と連携しながら、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、適切かつ必要な就学・指導の支援体制の整備に努めます。
また、一人一人の実態に応じた適切な指導を行うために作成した「個別の指導計画」と医療、福祉、雇用等の関係機関と連携して作成した「個別の教育支援計画」の活用を推進します。
「施策5 人間性や社会性の基礎を身に付ける幼児教育」として、幼児の発達や義務教育への学びや生活の連続性を踏まえ、生きる力の基礎を育む幼児教育を子ども若者課と連携して推進します。
令和4年度より運用される「佐渡市公立保育園・幼稚園・認定こども園 運営基本指針」では、『あそびは学び さまざまな物・人・自然と関わり とことんあそびこめる子ども ~未来を切り開く力の基礎を培う~』を基本理念としており、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を明確にした教育を進めることを示しています。
今後も幼児の実態を把握し、小学校への円滑な接続ができるよう、関係機関と連携して適切な就学支援を行います。
「施策6 佐渡を知り、愛し、誇りとするキャリア教育」として、佐渡への愛着と誇りをもった児童生徒を育成するため、佐渡の自然・歴史・文化への理解を深め、体系化した「佐渡学」を中核とする郷土学習を推進します。現在「佐渡学」の実施は、100%であり、すべての学校で総合的な学習の時間等に位置付けられ実施されています。今後も継続した取組を推進していきます。
また、キャリアパスポートについては令和3年度末に幼・保・子ども園のシートも作成し、令和4年度から幼児から高校生まで引き継げるものとします。
令和3年度は、すべての中学校と佐渡中等教育学校や羽茂高校とも連携して課題解決型職場体験に取り組み、約380人の生徒が97の事業所の協力のもと、実施することが出来ました。コロナ禍で受け入れが難しい事業所もありましたが、複数の学校を受け入れてくれる事業所の協力を得て、生徒は貴重な体験をする事が出来ました。
今後も、中学校における職場体験活動を充実させるため、課題解決学習を取り入れた指導への支援と受入企業の拡充を進めます。
「施策7 世界と共生する人材を育成する教育」として、グローバル化が進展する中で、外国語指導助手や英語専科教員等、人材の確保に努め、英語教育や国際理解教育の充実とコミュニケーション能力の育成に努めます。
また、Gigaスクール構想に基づき、情報化社会に的確に対応できる人材を育成するため、情報教育の充実やICT機器の効果的活用を推進します。
「施策8 安全な学校環境づくり」として、学校、家庭、地域が協力して、幼児児童生徒を見守る体制づくりを進めます。
また、警察や消防、災害のメカニズムを学ぶためのジオパーク推進室等、関係機関と連携した防災教育の実施を指導・支援します。
そして、学校施設の長寿命化改良を計画的に行い、児童生徒が安心して学べる環境づくりに努めます。
「施策9 安心して学べる学校づくり」として、『佐渡市いじめ防止基本方針』(改訂版)に基づき、いじめをしない、許さない、命を大切にする意識を醸成するとともに、いじめの未然防止、早期発見、即時かつ親身で丁寧な対応を図るために、学校との情報共有を強化し、組織的な体制づくりを支援します。
不登校児童生徒への的確な対応を進めるため、新潟県が示す「子どもとともに1(ワン)・2(ツー)・3(スリー)運動」、佐渡市共通の取組で令和4年度よりデジタル化を図る「心の健康チェックアンケート」の活用を徹底し、早期発見に努めます。また、相談や支援体制においては、教育支援センターを整備して適応指導教室や訪問指導事業等を充実させるとともに、子ども若者相談センター等の関係機関との連携を図ります。
「施策10 大学や研究機関を活用した教育」として、大学や研究機関と連携し、その関連施設や職員を活用した教育活動を推進していきます。令和3年度には、新潟大学教職大学院と連携し、佐渡総合教育センターと大学院を結び、オンラインで授業を行いました。今後も積極的に高等教育・研究機関との連携を図ります。
また、新潟大学人文学部と連携協定を締結している協定事業として、人材の育成と地域社会の発展に貢献することを目的とした「佐渡学セミナー」や「シンポジウム」の開催を引き続き開催していきます。
加えて、令和4年度から学生の教育研究活動・情報提供の場として、博物館での資料整理や研修等での連携強化を図っていきます。
「施策11 大学・大学生等との交流」として、新型コロナウイルスの感染状況に配慮しながら大学関係者や大学生等を佐渡市に積極的に招致し、佐渡市の小中学校と交流する教育活動を広げます。
「施策12 公民館の利用促進」として、市民の暮らしが充実し、家庭や地域における課題解決のきっかけとなるよう、学習機会を提供するとともに、自主講座の活動支援も行うなど、公民館を生涯学習の拠点施設と位置付け、様々な教室や講座を開催します。
また、社会教育事業の一環として、キャンプなどの自然体験活動を通した青少年の生きる力や社会性・人間性を育む事業や、家庭教育学級などでの親子の触れ合いを目的とした取組を行うとともに、高齢者の生きがいづくりや健康づくりの機会充実のため、各種教室や講座を行います。
併せて、地域の集う場、学ぶ場、つなぐ場である公民館分館の活動を推進し、居場所づくりや生きがい対策に努めます。
「施策13 スポーツの推進」として、佐渡市スポーツ推進委員や佐渡市スポーツ人材バンクを活用し、さまざまなニーズに対応できるスポーツ環境の充実を図ります。特に学童期のスポーツの習慣化を図るため、親子スポーツ教室を開催するほか、中高年がスポーツをする機会の充実と健康寿命の延伸を目的とし、ウォーキング教室、ヨガ教室、ストレッチ教室など気軽に参加できるスポーツ教室を開催します。
「施策14 佐渡の人づくりを支える、地域の学びの拠点としての図書館運営」として、幅広い市民が読書に親しみ学習できるよう、資料の充実や県内外の図書館と連携し課題解決に引き続き努めます。
特に令和4年度においては、親子連れや子どもたちに絵本に親しみ読書に楽しむ経験を提供できるよう、子育て世代や子どもを対象とした行事等を実施します。また、音声図書や再生機器を配備し貸し出すことで、高齢や障がい等により活字が読みづらくなっている方への読書支援に取り組みます。
「施策15 佐渡が誇る資産を活用した学習の推進」として、佐渡ジオパークの事業については、市民向け講座、親子体験、学校等での出前授業の充実を図るとともに、子どもの学習発表の機会を設け、ジオパークガイドを養成するなど、市内外から活動に参加し楽しく学ぶことができるような取組を進めます。
佐渡博物館では、見て、触れて、楽しみながら郷土を学び合う場を提供し、来館者に満足してもらえる博物館を目指します。
また、小中学校への出前授業や、ジュニア学芸員育成事業などを行い、子どもたちの考える力を育む機会を提供し、郷土愛の醸成に努めます。
「施策16 文化・芸術の振興」として、誰もが文化・芸術に親しみ、文化活動に参加し、その担い手となるよう、さまざまな文化事業等を充実させます。
また、各地区公民館講座において、絵画や版画等の講座を開講し、芸術に触れる機会の充実を図るとともに、大規模改修によりリニューアルオープンした佐渡中央文化会館において、芸術・文化に触れる機会を提供いたします。
「施策17 家庭や地域の教育力向上のための取組」として、児童生徒の健全育成と学習習慣の確立を目指し、PTAや公民館等において家庭教育の啓発活動を推進するとともに、貧困の連鎖を防止するための学習支援を子ども若者課と連携して進めます。
令和3年度はすべての小中学校が学校運営協議会において学校課題や地域課題についての熟議を重ねました。今後、学校運営協議会と地域学校協働本部が連携し、学校と地域の課題を共有し、「地域の子どもは地域で育てる」という視点を重視した取組を進めます。具体的には令和3年度までに「放課後子ども教室」は9校で実施されています。令和4年度も地域や学校に働きかけていきます。
また、令和5年度から始める段階的な部活動の地域移行に向けて、令和4年度は、関係機関で組織する検討委員会を立ち上げ、体制づくりに努めていきます。
「施策18 虐待や貧困から子どもを守るための関係機関との連携強化」として、令和3年8月改定の「学校からの通告のフロー図」に基づき、児童相談所や子ども若者相談センター等との緊密な連携で、虐待の予防と早期発見・対応に努めます。
また、就学支援が、必要とされる家庭に行き届くよう、引き続き周知徹底に努めます。
『佐渡市教育大綱』の基本理念に基づき、学校・家庭・地域が連携し、課題を共有するとともに、『佐渡市教育振興基本計画』に掲げる施策を着実に実施していくため、文部科学省が実施している「地方教育アドバイザー制度」を活用し、令和4年度より継続的に、文部科学省職員よりアドバイスを受け、指標として掲げる令和6年度目標値を達成すべく取り組んでいきます。
また、児童生徒数や学級数が減少している状況を踏まえ、学校規模の適正化に向けた「佐渡市小学校・中学校再編統合計画」を令和4年度中に策定・公表し、小中学校の再編統合について、検討・協議を進めます。
本市の教育の充実・発展のため、各取組に対する議員並びに市民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げ、令和4年度の教育行政方針といたします。