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令和7年第2回佐渡市議会定例会の開会に当たり、佐渡市教育委員会所管にかかる教育行政方針について申し述べさせていただきます。
関係各位並びに皆様のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
少子化・人口減少や高齢化、グローバル化やデジタル化の進展など、社会の変化は加速度を増しています。佐渡市では、特に少子化傾向が顕著であり、子ども同士による人間性を育み高め合う機会や学び合う機会が少なくなってきました。今求められる学びの姿としては、探究的な学習や体験活動等を通じ、他者の多様な考えや意見に触れながら合意形成を図ったり、新たな価値を創造したりする協働的な学びが重要です。このことから、豊かな人間性や社会性を育成する大事な小・中学生の時期に、集団での学習活動等にしっかりと取り組める教育環境の充実を図ります。そのために、佐渡市小学校・中学校再編統合計画による再編統合を着実に進めるとともに、「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、学校と家庭・地域が相互に連携・協働し、社会が一体となって子どもたちを育んでいく必要があります。
学力の面では、子どもたちが学ぶことの意義を実感して主体的に学びに向かうことが大切であり、各学校における授業改善に向けた取組を支援してきたところです。学習意欲の更なる向上のためには、ICTの利点を最大限に生かし、子ども一人一人の特性や学習進度、興味・関心等に応じた個別最適な学びを一層推進するとともに、大学や各種教育機関との連携を深めていく必要があります。また、急速に変化し、予測困難な社会において、答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われています。目の前の事象から課題を見いだし、主体的に考え、対話や協働を通じて納得解や最適解を生み出すなど、よりよく生きていくために必要な資質・能力を育んでいけるよう取り組んでいきます。
安全・安心な学びの環境づくりにおいては、全国的に不登校児童・生徒数が増加している中、佐渡市では1人1台端末を活用した「心の健康チェックアンケート」を行い早期発見に努めるとともに、関係部署や機関と連携して相談業務や必要な指導を行っています。今後とも一人一人の心の居場所づくりを支援し、寄り添った指導を行っていきます。
豊かで健やかな心身を育んでいくために、令和5年度からスタートした「佐渡市地域クラブ活動」の一層の推進をはじめ、離島である本市で生まれ育つ子どもたちが、佐渡だからこそできる充実した様々な体験や経験を積み重ね、自分のよさや可能性を認識できる機会の充実を図っていきます。
また、子どもから高齢者までの様々な世代の市民が、生涯にわたって意欲的に学び続けられるように、世界文化遺産をはじめとする多様な歴史・文化・自然について学べる学習機会の充実を関係部署等と連携して取り組んでいきます。
それでは、令和7年度の教育行政施策につきまして、佐渡市教育振興基本計画の6つの基本目標ごとにその概要をご説明いたします。
確かな学力の育成については、指導主事を核とした学校支援訪問により、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善に向けた指導・助言や各種研修を着実に進めるとともに、学校運営全般や学級づくりに向けた支援と生徒指導上の諸問題等の解決のための伴走支援を、年間を通して計画的に実施していきます。更に、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)の配置により、教員の業務負担の軽減を図り、児童・生徒と向き合い接する時間や授業研究のための時間を十分に確保し、きめ細やかな指導につなげていきます。
また、昨年度より全ての小・中学校に導入したAIドリルや授業支援ソフトの効果的な活用を進めるとともに、令和7年度に更新時期を迎える1人1台端末について、学校現場の声や学校間での学びの連続性等を踏まえて、より使いやすく効果的な学習のためのツールとするため、機器の更新を確実に実施するとともに、体育館等のWi-Fi環境の整備を進めていきます。
併せて、大学生とオンラインでつながり、学習支援や進路等の悩みを共有できる「地域未来塾」の取組を拡充することで、学校の授業以外でも学習できる機会の充実を図っていきます。更に、特別支援教育についても、幼児及び児童・生徒の教育的ニーズを把握するとともに、個別の教育支援計画等を活用しながら、一人一人の自立と社会参加を目指した教育を推進します。
また、「幼保小の架け橋期のカリキュラム」に基づき、交流活動や職員同士の相互理解を図り、幼児教育と小学校教育の円滑な接続を進めるなど、適切かつ必要な就学・指導の支援体制の充実を図ります。
心身を育む教育としては、令和6年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果では、佐渡市の児童・生徒は総合的には新潟県の平均以上でしたが、柔軟性などやや弱い部分がありました。生活習慣においては、朝食欠食の割合が高く、ゲームやスマートフォンなどの視聴時間が増加傾向にあります。これら結果も踏まえつつ、各学校の課題を明らかにした上で「1学校1取組」を実施します。また、令和5年度から始まった「佐渡市地域クラブ活動」の推進により、学校部活動にはない多種多様な魅力ある種目を取り入れ、質の高い豊かな活動機会を確保するとともに、生涯にわたってスポーツや文化芸術活動に親しむためのきっかけづくりを行います。更には、子どもたちが読書活動により、知識や情報を得ながら豊かな情操や想像力、思考力などを育めるよう学校図書の充実を図るとともに、読み聞かせやブックスタート等の事業に取り組みます。
道徳教育においては、引き続き国の事業等も活用して「考え、議論する道徳」に向けた実践研究を進め、よりよく生きるための基盤となる道徳性を育むとともに、いじめ見逃しゼロを目指します。また、佐渡人権展への参加による人権意識の育成や平和教育にも取り組みます。
佐渡市では、キャリア教育を通して、「豊かな人生と佐渡の未来を切り拓く人」の育成を目指します。その実現のため、佐渡の歴史・文化・自然への理解を深める「佐渡学」を中核とした郷土学習を推進するとともに、世界文化遺産である「佐渡島の金山」や佐渡おけさ、朱鷺やジオパークなど、博物館や佐渡ジオパーク推進協議会等をはじめとする関係部署・機関と連携し、これまで培ってきた専門員による出前授業や「ジュニア学芸員養成講座」、「ジオクラブ」等の学校と連携した取組を継続し、佐渡ならではの豊かな体験活動を支援します。
また、島内の各事業所の課題解決に向けて考え、行動する「課題解決型職場体験活動」では、受入先となる事業所や公的機関の拡大と探究的な学習としての質の向上に取り組むとともに、高校生や地域の大人との「対話の場」を創出し、自己の在り方や生き方を考える機会の充実を図っていきます。
更に、幼児期終期から高等学校までのキャリア教育で得た学びや思いなどを記録し、キャリア・パスポートとして学校間で引き継ぐことで、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり、振り返ったりして自己評価を行うとともに自己実現につなげていきます。
併せて、郷土愛を醸成する上では、外国の人々や文化に関心をもつことも重要であることから、外国語指導助手(ALT)やスポーツ国際交流員(SEA)の効果的な活用を進め、学校内外の様々な場において、外国語でコミュニケーションをとる機会の充実やスポーツを通じた国際理解を促進し、異文化を尊重して国際社会を生きるために必要な資質・能力の育成を図ります。
安心して学べる学校づくりとしては、各学校において、学習や生活の基盤となる学級づくりを大切にするとともに、自己肯定感を育むための取組を実施し、学校が楽しいと思える児童・生徒が増えるように研修内容の充実や指導・助言等に努めます。また、「佐渡市いじめ防止基本方針」に基づき、いじめの未然防止、早期発見、即時対応に努めます。心の教室相談員、不登校訪問指導員の配置をはじめ、あすなろ教室の運営や相談対応など、児童・生徒が抱える個々の悩みや困り感に寄り添った支援を行うとともに、臨床心理士による相談支援をはじめ、1人1台端末を活用したアプリによる日頃の健康観察や定期的な「心の健康チェックアンケート」の実施、空き教室を活用した子ども一人一人の居場所づくりを推進し、いじめ防止や不登校の対応に取り組みます。
児童・生徒の通学支援については、遠距離通学の児童・生徒に対するスクールバスの運行や通学定期券及び通学費補助金の交付により経済的負担を軽減するとともに、要保護及び準要保護児童・生徒の保護者へは就学費用の一部を援助します。更に、高校や大学等への修学の支援では、奨学金の貸与等を通じて教育の機会均等を図り、意欲ある青少年の自己実現を応援します。
学校給食では、無農薬無化学肥料米等の佐渡産食材を取り入れ、食への感謝や望ましい食習慣等、成長段階に応じた食育に取り組むとともに、食物アレルギー対応や異物混入防止に取り組み、安全安心な給食を提供します。学校給食費については、物価高騰分を市が補填することにより、保護者負担の軽減を図りつつ、栄養バランスの取れた質の高い給食の提供に努めます。
通学路は、通学路交通安全プログラムにのっとり、新潟県佐渡地域振興局、佐渡警察署、佐渡市建設課と連携して合同点検を実施し、優先度を勘案しながら修繕等を進めるとともに、スクールガードリーダーの配置をはじめ、地域ぐるみで子どもを見守る体制づくりを進めます。
また、各学校では、警察や消防、防災士などの地域の専門家を活用した防災教育、佐渡ジオパーク推進協議会と連携した自然災害に関する防災教室等を推進し、災害に対する正しい知識や身を守る方法、地震などの災害メカニズムへの理解を深めていきます。
学校の再編統合については、義務教育の果たすべき役割を踏まえ、児童・生徒の教育条件の改善のために、佐渡市小学校・中学校再編統合計画に基づいて、学校再編統合協議会における統合協議を丁寧かつ慎重に進めていきます。統合にあたっての期待や要望、不安といった児童・生徒本人や保護者の声を聴きながら、個別の課題等に丁寧に向き合い、よりよい教育環境の実現を目指していきます。
併せて、児童・生徒の学校生活がより安全なものとなるように、佐渡市学校施設長寿命化計画に基づく整備等を進めて環境整備に努めます。
大学や研究機関との連携では、教員の指導力向上を目指すため、新潟大学教職大学院と連携した教職員向けの講座の実施をはじめ、総合教育センターの研修講座において、各種教育の専門家の招聘や大学附属学校の研修会等へ教員を派遣するとともに、教員が得た情報は島内で共有し、教員同士の研鑽を重ねていきます。
また、大学連携による学習支援として、小・中学校へ大学関係者や学生等を招聘したり、オンラインを活用して交流したりする教育活動を広げます。更には、連携協定を締結している新潟大学人文学部と協力・連携して「佐渡学セミナー」や「シンポジウム」を実施し、市民が佐渡を深く学ぶ機会の充実を図ります。
市民一人一人が趣味や教養を高めて自己を充実するために公民館を核とした生涯学習を推進します。子どもや子育て世代に向けては、親子で学び合うことを目的とした親子参加型の教室や「子どもキャンプ」などの野外体験教室を行い、子どもたちの生きる力を育んでいきます。
中高年世代に向けては、趣味などの興味・関心に目を向け、充実した人生の一助となる公民館講座の開設に取り組むとともに、この年代は、運動の機会が少ない傾向にあることから、ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、取り組みやすい各種教室を開催し、運動に親しむとともに健康づくりの機会を創出します。その他、学びや仲間づくりなどの観点から、様々な教室や講座、講演会を開催し、市民の学習機会の充実を図ることにより、心豊かな生活を送るための支援を行います。
特に高齢者は、自宅から遠方に出向くことが難しくなる傾向にありますので、ライブ配信システムを整備することにより、各地区公民館等において遠隔地で行われる講演会や学習会に参加できるよう環境を整備していきます。また、参加すると佐渡産品等と交換できるポイントがもらえる「健幸ポイント事業」を継続して実施し、高齢者にはポイントが多くもらえるなどのインセンティブを付与することにより、積極的な参加を促します。更には、社会教育施設の利用料金及び受講料の無償化、ラジオ体操普及啓発事業などの取組により、高齢者の活動を多方面から支援していきます。
また、図書館は地域の学びの拠点として、市民が読書に親しみ、それぞれのライフステージにおいて学習できるよう、図書の充実やレファレンスサービスの向上に努めるとともに、学校図書館、ボランティア団体等と連携するなど、市民との協働による図書館運営を推進します。特に令和7年度は、さわた図書館の機能移転を完了させ、親子で読書に親しめる環境や子どもたちの学習環境の充実を図ります。
このほか、各公民館・図書館については、Wi-Fi等の学習環境の整備を進めるとともに、図書館では、音声図書の活用による高齢者や障がい者の読書活動の支援に努めます。
子どもの健やかな成長を支援するためには、学校はもとより、家庭や地域の協力が必要不可欠です。学校では、学校運営協議会において、地域と学校が目標や課題を共有し、連携・協働のもと、子どもたちの健全育成や学校運営の改善に取り組みます。教育委員会では、協議会での熟議の充実を図るための研修や訪問支援をはじめ、CSポートフォリオの導入等を着実に進めていきます。地域の方や保護者による登校時の見守りをはじめ、「放課後子ども教室」や地域との合同運動会・文化祭、合同防災訓練など、地域の特色や課題等に応じた活動の充実を図っていきます。
また、子どもの家庭における学習時間の確保、学習習慣の確立は喫緊の課題です。学校と家庭が連携し、特に1人1台端末を活用したAIドリル等のデジタル教材の有効活用、大学生等を活用した「地域未来塾」の取組を更に進め、学校や授業以外での学ぶ機会の充実を図っていきます。
深刻さを増す少子化や高齢化、混迷を増す世界情勢、気候変動に伴う自然災害や生成AI等のデジタル技術の発展など、社会や経済の先行きに対する不確実性がこれまでになく高まっています。
これからを担う子どもたちは、激しい変化が止まることのない時代を生きることになります。そのような中で、学校や家庭、地域と連携を図りながら、新たな時代を生きるために必要な力を確かに育成していくことが私たちの責務と考えています。教育への意識を高くもち、豊かな人間性と創造性の育成を目指して、きめ細かな指導を行っていきます。
また、情報化の進展や価値観の多様化に伴い、市民からの学習要望が多種多様になっていますので、多くの市民が生涯にわたって学び続け、活躍できる教育環境の実現に向けて取り組んでいきます。
そして、佐渡市教育振興基本計画の基本理念にあります「豊かな人生と佐渡の未来を切り拓く人の育成」のもと、一人一人の自己実現を目指した教育を力強く推進し、全ての人が、それぞれの分野で成長し、豊かに生き生きと輝き続けていくための力を育んでいくために、佐渡市教育振興基本計画に掲げる6つの基本目標を中心とする施策を着実に進めていきます。
本市の教育の充実・発展のため、各取組に対する議員並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、令和7年度の教育行政方針といたします。