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令和5年度:住民監査請求の監査結果(佐渡観光交流機構負担金の支出について)

記事ID:0057328 更新日:2024年1月26日更新 印刷ページ表示

本ページの目次


地方自治法第242条第5項の規定により、住民監査請求に係る監査を行ったので、監査の結果を公表します。

佐監公表第7号
令和6年1月25日
佐渡市監査委員  渡部 直樹
佐渡市監査委員  山田 伸之

請求人

省略

請求の要旨

本件請求の要旨は、次のとおりであると解した。

  1. 令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金73,898,000円のうち、運営費負担金47,799,770円は、負担金の交付要綱を定めずに交付しており、佐渡市補助金等交付規則(平成16年規則第55号。以下「交付規則」という。)に違反した違法又は不当な公金支出であるので必要な措置を求める。
  2. 令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構運営費負担金47,799,770円(以下「R4運営費負担金」という。)は、一般社団法人佐渡観光交流機構負担金に関する規程(以下「負担金規程」という。)により取り決められた39,091,000円を上回っていることから、過大となっている8,708,770円は違法又は不当な公金支出であるので必要な措置を求める。
  3.  令和3年度一般社団法人佐渡観光交流機構事業負担金(以下「R3事業負担金」という。)及び令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構事業負担金(以下「R4事業負担金」という。)について、令和5年8月の佐渡観光交流機構調査チームによる報告書(以下「調査報告書」という。)で指摘されている事業不用額2,065,207円は不当な公金支出であるので必要な措置を求める。

請求の受理

請求の受理の経過

本件請求は、令和5年11月27日に提起され、同年12月1日に要件審査にかかる補正を求めたところ、同年12月8日に補正され、同年12月22日に地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第1項に定める要件を具備しているものと認め、これを受理した。
なお、補正に要した日数は、法第242条第6項に規定する監査期間60日から除外した。

請求人の適格性について

本件請求人は法人格を持たない団体である。
住民監査請求ができるのは、当該地方公共団体の住民であり、住民であれば、法律上の行為能力が認められる限り、個人であると法人であるとを問わないとしている。そして、住民とは当該普通地方公共団体の区域内に住所を有する者であり、住所とは生活の本拠をいうが、法人においては活動の拠点をいい、主たる事務所の所在地又は本店の所在地をいう。よって、地方公共団体の区域内に主たる事務所又は本店の所在地がある法人が、当該地方公共団体において監査請求をすることができる。
法人格を持たない団体については、原則として権利能力を有しないため、団体としては監査請求をすることができないと解されるが、当該団体に権利能力のない社団の法理が適用される場合には、法人格が付与されたのと同等に取り扱われるため監査請求をすることができると解される。なお、この場合においても、当該団体の主たる事務所が当該地方公共団体の区域内にあることが前提となる。
権利能力のない社団の法理の適用要件については、最高裁判所は「団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」としている(最高裁昭和39年10月15日判決)。また、この場合、住民でない者たちが監査請求を行うことを目的に参集し、権利能力のない社団を結成して、その主たる事務所を当該地方公共団体の区域内に置くことによって監査請求を行うことも可能となるが、これは前記した住民監査請求の制度趣旨に反するものである。従って、権利能力のない社団の設立目的が上記のようなものであると認められる場合には、当該社団は権利能力のない社団の法理を濫用するものであり、監査請求をすることはできないと解される。
以上を踏まえ、請求人が提出した資料を確認したところ、請求人は権利能力なき社団の法理の適用要件を満たすものとして、請求人としての資格を有するものと認めた。

監査の執行

監査の期間

令和5年12月22日から令和6年1月25日まで

監査の対象部署

観光振興部観光振興課(以下「観光振興課」という。)

監査の対象

  1.  令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金73,898,000円のうち、R4運営費負担金が違法又は不当な公金支出に当たるか。
  2. R4運営費負担金のうち、負担金規程を上回る8,708,770円が違法又は不当な公金支出に当たるか。
  3. R3事業負担金及びR4事業負担金のうち、調査報告書で指摘されている事業不用額2,065,207円は違法又は不当な公金支出に当たるか。

請求人の陳述及び証拠提出

令和6年1月11日に請求人の陳述を聴取した。請求人からは新たな証拠及び請求の要旨の二次補正が提出された。

観光振興課の弁明及び証拠提出

令和6年1月16日に、観光振興課から請求に対する弁明書及び証拠が提出された。

監査の結果

主 文

本件請求を棄却する。

理 由

関係法令

法第232条の2は、次のように規定している。
(寄附又は補助)
第232条の2 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

認定事実

本件請求に関し、次の事実を認定した。

負担金支出に関する交付要綱について

交付規則は、「補助金等」とは、市がその公益上必要がある場合において、市以外の者に対して交付する補助金、負担金、利子補給金その他の給付金で相当の反対給付を受けないもの(市長が定めるものを除く。)と定義付けており(第2条)、補助金等の名称、目的及び率又は額並びに補助事業等の内容は、市長が別に定めると規定している(第4条)。これは、補助金等を交付する際は交付要綱を制定し、当該要綱の規定に基づいて補助金等を交付することを意味している。しかし、観光振興課は、一般社団法人佐渡観光交流機構負担金について、交付要綱を制定していなかった。
ただし、観光振興課は、令和5年3月30日に一般社団法人佐渡観光交流機構負担金交付要綱(告示第147号)を制定し、令和5年4月1日から施行している。

令和3年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金

令和3年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金は、第2回佐渡市議会定例会において令和3年3月2日に63,316,000円が上程され、同年3月22日に可決されている。同年4月5日付けで、一般社団法人佐渡観光交流機構(以下「交流機構」という。)から負担金63,316,000円の納入依頼が提出され、同日、観光振興課が受理し、支出負担行為伺を起票している。また、納入依頼と同日付けで交流機構から上期分の負担金24,658,000円が請求され、同日に観光振興課は受理し、同年4月12日、支出命令票を起票し、同年4月26日に支払いが行われた。同年10月27日付け、交流機構から下期分の負担金38,658,000円の納入依頼及び請求書が提出され、同日、観光振興課は受理して支出命令票を起票し、同年11月15日に支払いが行われた。負担金の内訳及び実績額は別表1のとおりである。

令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金

令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金(以下「R4交流機構負担金」という。)は、第2回佐渡市議会定例会において令和4年3月1日に73,928,000円が上程され、同年3月18日に可決されている。同年4月18日付けで、交流機構から負担金73,928,000円の納入依頼が提出され、同日、観光振興課が受理し、支出負担行為伺を起票している。また、同日付けで交流機構から上期分の負担金36,964,000円が請求され、同日に観光振興課で受理し、同年4月22日、支出命令票を起票し、同年5月6日に支払いが行われた。同年12月14日付け、交流機構から下期分の負担金36,964,000円が請求され、同日、観光振興課は受理して支出命令票を起票し、同年12月26日に支払いが行われた。負担金の内訳及び実績額は別表2のとおりである。

各負担金の不用額について
  1. 令和3年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金のうち、外部人材負担金14,000,000円に対し、交流機構の実績額は13,970,000円で30,000円の不用額が発生している。調査報告書では当該不用額に触れていないが、これは、交流機構の決算において、運営費負担金と外部人材負担金を合計したものを観光交流機構負担金としているため、全体では不用額は発生していないと認定している。
  2.  R3事業負担金のうち企業研修誘客事業2,500,000円に対し、交流機構の事業実績額は令和4年度財政援助団体等監査結果のとおり2,118,420円で381,580円の不用額が発生している。
    なお、上記不用額について、佐渡市は令和6年1月18日付け佐観第494号により、交流機構に返還命令を行っている。
  3.  R4運営費負担金53,898,000円に対し、交流機構の実績額は43,078,788円であり、10,819,212円の不用額が発生している。調査報告書では運営費負担金を47,799,770円として、不用額を4,720,982円と算定しているが、運営費負担金53,898,000円のうち6,098,230円を外部人材負担金に流用したと認定しているためである。
    なお、不用額4,720,982円について、佐渡市は令和6年1月18日付け佐観第495号により、交流機構に返還命令を行っている。
  4. R4事業負担金は観光地域づくり推進事業4,305,000円に対し、交流機構の事業実績額は3,183,312円で1,121,688円の不用額が発生、同じくトレッキング客の誘客促進事業5,695,000円に対する交流機構の事業実績額は5,133,061円で不用額561,939円が発生している。
    なお、不用額合計1,683,627円について、佐渡市は令和6年1月18日付け佐観第495号により、交流機構に返還命令を行っている。

観光振興課の弁明

観光振興課から提出された弁明書の概要は次のとおりである。

弁明の趣旨

本件請求を棄却するとの決定を求める。

請求事実の認否

請求人が主張する事実については否認する。本件負担金の支出は、裁量的な財務会計行為であって、適法かつ妥当に行われた。

弁明の理由

本件負担金については、佐渡市の観光に資する点から、高度の公益性を有する事業であると言える。したがって、本件負担金の交付は、法第232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に該当する。
したがって、本件負担金の支出に違法性は認められず、支出事務のあり方において改善すべき点があったとしても、支出自体の不当性は認められない。
なお、本件負担金における不用額については、令和5年3月30日付けで制定した一般社団法人佐渡観光交流機構負担金交付要綱に準じて額の確定審査を行っており、確定審査後、返還を求める手続きを行う。

監査委員の判断

R4運営費負担金について

地方公共団体が行う寄附又は補助は、公益上必要がある場合に限られる(法第232条の2)。公益上必要があるか否かは、市長及び議会が裁量によって個々の事案ごとに認定することとなる。
このように裁量的な財務会計行為に関しては、裁量権の逸脱又は濫用があった場合に違法と評価され(最高裁平成25年3月28日判決)、裁量権の逸脱・濫用に至らない程度の不合理な行使があった場合に不当と評価されるものと解するのが相当である。
請求人は、R4交流機構負担金のうちR4運営費負担金が、負担金に関する交付要綱を定めずに支出していることが不当であると主張しているが、R4交流機構負担金は、令和4年度当初予算に観光交流機構負担金の名称で、73,928,000円予算計上され、議会の議決を経て同額が交流機構に交付されている。事業実績において不用額は発生しているものの、このことにより、裁量権の不合理な行使があったと評価することはできないものと判断する。

R4運営費負担金のうち負担金規程を上回る支出について

請求人は、R4運営費負担金が、負担金規程により取り決められた39,091,000円を上回っていることから、過大となっている8,708,770円が不当な公金支出であると主張しているが、佐渡市の公金支出が負担金規程に左右されることはなく、前述したとおり、公益上の必要性について、裁量権の不合理な行使があったと評価することはできないものと判断する。

R3事業負担金及びR4事業負担金にかかる事業不用額について

当該事業不用額が発生していることは事実であるが、このことがただちに、裁量権の行使に合理性を欠くものと評価することはできないと判断する。

結 論

よって、本件請求には理由がないと認められるので、法第242条第5項の規定により主文のとおり決定する。

意 見

本件請求は棄却としたが、本件負担金については、交付規則及び佐渡市補助金等交付規準(平成29年佐財第568号)に基づいて適切な事務執行が行われていなかったことが大きな問題であった。さらに、調査報告書が公表されてから4か月以上経過した令和6年1月18日に、当該負担金において発生した不用額の返還手続きが行われたことも問題を長期化させている。
なお、本件認定事実と調査報告書の不用額の算出方法に違いが生じていることから、各負担金の区分及び不用額の算出方法について、市執行部としてどのように捉え判断したものか疑義が生じる。
本件の事実を真摯に捉え、適切な事務執行に努められたい。

 

別表1 令和3年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金の内訳及び実績額

区  分

負担金納入依頼

上期分負担金

下期分負担金

実 績 額

運営費負担金

39,091,000円

19,545,500円

19,545,500円

45,090,688円

外部人材負担金

14,000,000円

0円

14,000,000円

13,970,000円

事業負担金

10,195,000円

5,097,500円

5,097,500円

11,286,370円

(地域で稼ぐシステム整備事業)

(2,000,000円)

(3,181,351円)

(企業研修誘客事業)

(2,500,000円)

(2,118,420円)

(トレッキング客の誘客促進事業)

(5,695,000円)

(5,986,599円)

佐渡観光交流機構年会費

30,000円

15,000円

15,000円

30,000円

合  計

63,316,000円

24,658,000円

38,658,000円

70,377,058円

   かっこ書きは事業負担金の内訳である。

 

別表2 令和4年度一般社団法人佐渡観光交流機構負担金の内訳及び実績額

区  分

負担金納入依頼

上期分負担金

下期分負担金

実 績 額

運営費負担金

53,898,000円

26,949,000円

26,949,000円

43,078,788円

外部人材負担金

10,000,000円

5,000,000円

5,000,000円

16,098,230円

事業負担金

10,000,000円

5,000,000円

5,000,000円

8,316,373円

(観光地域づくり推進事業)

(4,305,000円)

(3,183,312円

(トレッキング客の誘客促進事業)

(5,695,000円)

(5,133,061円)

佐渡観光交流機構年会費

30,000円

15,000円

15,000円

30,000円

合  計

73,928,000円

36,964,000円

36,964,000円

67,523,391円

   かっこ書きは事業負担金の内訳である。