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随時監査結果(令和5年度)に基づいた改善措置等の状況(創業・事業拡大等支援事業)
- 随時監査結果(令和5年度)(創業・事業拡大等支援事業)に基づいて佐渡市が講じた改善措置等をご紹介します。
- 参考:普通地方公共団体の議会、長又は関係のある委員会等は、監査結果に基づいて、又はこの監査の結果を参考にして措置を講じたとき、監査委員にその旨を通知するよう義務づけられています。また、監査委員はその通知を公表するよう義務づけられています(地方自治法第199条第14項の規定による)。本ページはその通知文の写しです。
佐監公表第2号
令和7年2月7日
佐渡市監査委員 渡部 直樹
佐渡市監査委員 山本 卓
本ページの目次
指摘事項
・補助金等の交付事務について
・要綱等の見直しについて
意見
・補助金等の交付事務について
・要綱等の見直しについて
・補助金の交付目的について
指摘事項
補助金等の交付事務について
指摘事項 1
市税等の滞納がないことが要件にもかかわらず、事前協議書に添付すべき佐渡市の納税証明書の提出を求めていない事例が見られた。
改善措置等の状況
市の補助金交付要綱では、市税等の滞納がないことが要件となっているが、応募者が市外の場合は、佐渡市の納税証明書が発行できないことから、国税の納税証明書の提出をもって滞納がないことを確認していました。令和7 年度公募要領では、市外事業者で新たに佐渡市内に事業所を設立する予定の申請者は、法人の場合は国税の滞納がないことの証明書(その3の3様式)、個人の場合は、住民登録等がある自治体から滞納がないことの証明書を提出させることとします。
指摘事項 2
事業拡大においては、市内に事業所を有することが要件となっているにもかかわらず、法人市民税設立・設置・異動等申告書を提出していない事業者に対し、補助金を支出している事例が見られた。
改善措置等の状況
事業所の定義について国へ照会したところ、厳密な定めはなくオフィス、工場、店舗、倉庫など様々な形態があり、離島の雇用増につながることが重要と回答を得たことから、法人市民税設立・設置・異動等申告書の提出を補助金交付の要件としていませんでした。市内に事業所を有するかは、事業所の賃貸借契約書や中間検査の実地調査で確認していました。令和7年度公募要領では、税法上の届出が必要な事業所を新たに設立した場合は、法人市民税設立・設置・異動等申告書の写しを提出させることとします。
指摘事項 3
事業計画期間中に新たに常用雇用する従業員は、佐渡市に住所を有する必要があるが、その住所を書面により確認していない事例が見られた。
改善措置等の状況
国への書面の提出が必須なわけではありませんが、佐渡市に住所を有するか確認する必要があるため、これまで雇用契約書、履歴書、タイムカード、日報などの提出書類から住所確認を行ってきました。令和6年度実績報告から、市が住民基本台帳を確認することについて同意が得られた従業員については住民基本台帳を確認し、同意が得られない従業員については住民票の提出を求めることとします。
指摘事項 4
雇用通知書の勤務場所が新潟市となっている従業員について、佐渡市内での勤務の実態を書面により確認をせず、その人件費を補助対象経費として認めている事例が見られた。
改善措置等の状況
新たな雇用となる要件としては、
- 事業期間中に、所定労働時間が週20 時間以上であり、市内に住民票を有している者を雇用すること
また、人件費の対象となる要件としては、
- 新たな雇用となる要件を満たしていること
- 新たな雇用となる要件を満たしていないが、雇用機会拡充事業に従事することを目的に、新たに雇用した者であること。(所定労働時間が週20 時間未満や島外勤務者)ただし、新たな雇用となる要件を満たしている者が少なくとも1 名必要
となります。
以上のことから、所定労働時間が週20 時間以上の従業員を1人でも雇用している場合、所定労働時間が週20 時間未満であっても、市外で勤務する従業員(雇用機会拡充事業に従事するために新たに雇用した者に限る)の人件費も補助対象となるため、補助対象経費として認めたものです。
令和7年度公募から、Q&A にて人件費の対象となる従業員の住所は佐渡市内であることを追記し、国との協議の上、チェック体制を強化します。
指摘事項 5
生計を一にする三親等以内の親族の人件費は補助対象外とされているところ、書面により実態を確認せず、当該親族に対する人件費を補助対象経費として認めている事例が見られた。
改善措置等の状況
市のQ&A に記載している通り、親族に対する人件費であった場合でも、生計を別にする三親等以内の親族は補助対象となります。生計が別であるかの具体的な確認方法は国から示されていないため、当時口頭による確認により、問題ないと判断しました。なお、人件費の実績確認のための雇用通知書、履歴書は確認しています。
令和6年度実績報告書から、親族雇用の場合は生計が同一か別かを申告させることとし、実績報告で提出を求めている様式(実績報告内訳書)を改正しました。なお、三親等以内の親族の人件費を対象としている場合は、別途、世帯が分かれているか、また、扶養親族になっていないかなどの状況を確認し判断します。
指摘事項 6
雇用の確認について、雇用保険被保険者資格確認通知書の提出を任意とし、その他の書類で確認を行っている事例が見られた。
改善措置等の状況
国から提出を必須とされているわけではなく、新たな雇用の要件となる所定労働時間が週20 時間以上か確認する書類として雇用保険被保険者資格確認通知書が容易であるため、チェックリストに記載しています。しかし、学生など雇用保険に加入できない場合もあるため、雇用契約書、出勤簿、タイムカード等ほかの書類で所定労働時間が週20 時間以上か確認できれば、雇用保険被保険者資格確認通知書の提出は求めていませんでした。
令和6年度実績報告から、雇用保険の加入の有無を申告させ、未加入の場合はその理由についても記載するよう、実績報告で提出を求めている様式(実績報告内訳書)を改正しました。雇用保険加入者については、雇用保険被保険者資格確認通知書の提出を求めます。
指摘事項 7
補助対象経費の費目の20%を超えて変更する場合は補助金変更承認申請書を提出させるべきところ、当該申請書を提出させずに実績報告を認めている事例が見られた。
改善措置等の状況
補助金執行においては次の5つの観点で行う事を徹底しており、制度の主旨・事業実施内容等を鑑みながら補助金交付の可否を判断しています。
(1)正確な支出内容が報告されているか
(2)要綱、要領等に従って適正に処理されているか
(3)事業の遂行がより少ない費用で実施されているか
(4)費用対効果を考慮した事業実施がなされているか
(5)事業の遂行について所期の目的を達成しているか
指摘を受けた事案については手続きに不備があったものではあるが、「(3)・(4)・(5)」を達成するために事業者が自主的に行った変更です。また、補助事業の交付目的に沿った範囲内で行われた変更であることから、その時点で変更承認申請がなされていた場合は承認した事案でした。
従って上記(1)~(5)に基づき、また、前述の状況なども踏まえた上で、総合的に判断を行い補助対象経費として認めたものです。
今後は、年度当初に開催する採択事業者向け説明会や、中間検査、フォローアップ支援業務における事業者へのモニタリング、実績報告説明会で改めて変更承認申請書の提出について周知徹底を図ります。
指摘事項 8
補助金変更承認申請を提出する前に事業着手したものを申請後に事後承認し、承認前の事業経費を補助対象経費として認めている事例が見られた。
改善措置等の状況
前記指摘と同様の理由により認めていました。今後は、変更承認申請書の提出を徹底します。
指摘事項 9
補助対象経費は、2月末日までに支払がされたものを対象とすべきところ、令和2年度のみ3月10 日までに支払った人件費を補助対象経費として認めていた。
改善措置等の状況
国の制度上は問題ありませんが、令和2年度事業に限り、決裁を経て全事業者を対象に今までと異なる特例を認めたものです。令和3年度以降元に戻したことについても、全事業者平等な取扱いであり、問題ないと考えています。
また、令和3年度以降、同様の事例はありません。
指摘事項 10
補助対象経費中に補助事業者の自社製品の調達又は関係会社からの調達分の経費が含まれ、補助事業者の利益となると認められる場合は、利益相当分を当該補助対象経費から除外するものとすると規定されているところ、明確な証拠書類により確認をしていない事例が見られた。
改善措置等の状況
令和5 年3 月28 日付け内閣府からの事務連絡により、自社製品の調達等に対しての具体的な対応方針が示されたが、当時は国から確認方法が明確に示されていなかったことから、口頭による確認としていました。
前述の事務連絡により、具体的な対応方針が示されたことから、令和5年度から前述事務連絡に基づく審査を行うとともに、令和6年度は事業実施者に配布した補助事業の手引き及び令和7年度公募分のQ&Aに、自社製品の調達等に係る具体的な経費の計上方法について記載しました。
指摘事項 11
実績報告書に添付することとされている書類のうち、工事完了届、賃貸借契約書及び雇用契約書等の提出を求めていない事例が見られた。
改善措置等の状況
国への書面の提出が必須なわけではなく、申請事業者が実績報告書の作成を容易にするための提出書類として例示したものであり、ほかの提出書類をもって実績が確認できる場合は、必ずしも全ての提出を求めるものではありません。今後も、他の提出書類をもって実績が確認できるものについては当該書類において確認を行います。
要綱等の見直しについて
佐渡市補助金等交付規準(平成29 年佐財第568 号)においては、公平、明瞭な補助金行政として、極力要綱を見れば補助制度を把握できるように整備することや、漠然とした表記はしないことを求めているが、交付要綱等において不明瞭な部分が見られた。
雇用対象者について
雇用については、新たに1週間の所定労働時間が20 時間以上の従業員を常用雇用することが交付要綱の要件であり、1週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ、31 日以上雇用されることが見込まれる場合は雇用保険法により原則として雇用保険への加入が必須とされている。しかしながら、交付要綱、佐渡市雇用機会拡充事業補助金公募要領及び佐渡市雇用機会拡充事業補助金Q&A等の補助金にかかる規程においては、そのことが明確に規定されていない。事業者には雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)の写し、健康保険、厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写しの提出を義務付けるべきである(社会保険加入の適用除外の場合は雇用保険の加入のみとする。)。また、雇用対象者の住所地を書面で確認するためにも、住民票の写しの提出を求めるべきである。
改善措置等の状況
雇用保険及び社会保険の加入については、QA5-2に記載しているほか、令和7年度公募要領においても、労働基準法を始めとする各種法令を遵守し、社会保険や雇用保険への加入など必要な手続を行うよう追記しました。(公募要領P5)また、住所の確認については、前述のとおり同意を得て住民基本台帳を確認するか、同意が得られない場合は住民票の提出を求めることとし、国との協議の上チェック体制を強化します。
法人市民税の申告について
事業拡大における補助事業者は市内に事業所を有することが要件となっているが、法人事業者が法人市民税の申告をしていない事例があることから、事業拡大の場合においても創業と同様に開業届の提出を求めるべきである。
改善措置等の状況
令和6年度からは、税法上の届出が必要な事業所を新たに開設した事業者については、実績報告にて法人市民税設立・設置・異動等申告書の写しの提出を求めるとともに、令和7年度は公募要領にて、上記書類を提出するよう追記しました。
補助対象経費について
1.店舗等借入費
島外において倉庫の借り上げを補助対象経費としている事例が見られたが、佐渡市内における創業や事業拡大を主たる目的としていることから、島外での店舗等借入費については対象外とすべきである。
2.人件費
新たに雇用する場合は、佐渡市に住民票のある者が1名以上いれば、佐渡市に住民票がない者の人件費も補助対象経費として認めているが、佐渡市内における創業や事業拡大を主たる目的としていることから、佐渡市に住所を移したことを確認した上で、佐渡市内の事業所の雇用にかかる人件費を補助対象経費とすべきである。
3.その他の経費
補助対象経費中に補助事業者の自社製品の調達又は関係会社からの調達分の経費が含まれ、補助事業者の利益となると認められる場合については、内閣府総合海洋政策推進事務局有人国境離島政策推進室からの令和5年3月28 日付け事務連絡通知により、自社製品の調達等についての論点、実態、対応方針が示されたことから、対応を厳密に行うとともに、佐渡市の交付要綱等にも明示をすべきである。
改善措置等の状況
1.店舗等借入費
島外顧客をターゲットとした事業者であり、大きな機械類を毎回輸送することは費用負担が大きいため、その機材を保管するために借り上げた倉庫であり、事業の拡大に必要な経費として認めていたもので、国とのやり取りの中で国からの指摘もなかった経費です。
今後も対象経費については国への照会も含め、事業内容に応じて個別に判断していきます。
2.人件費
所定労働時間が週20 時間以上の従業員を1人でも雇用している場合、所定労働時間が週20 時間未満であっても、市外で勤務する従業員(雇用機会拡充事業に従事するために新たに雇用した者に限る)の人件費も補助対象としていました。
令和7年度公募からは要件を厳格にし、Q&Aにて人件費の対象となる従業員の住所は佐渡市内である必要がある旨を追記し、国との協議の上チェック体制を強化します。
3.その他の経費
令和5年度から前述事務連絡に基づく審査を行うとともに、令和6年度事業実施者に配布した補助事業の手引き及び令和7年度公募分のQ&Aにおいて、自社製品の調達等に係る具体的な経費の計上方法について追記しました。
意見
1.補助金等の交付事務について
監査の結果で述べたとおり、補助金等の交付事務のチェック等において不適正な事務処理が見られた。これは、補助事業者からの実績報告の提出から補助金の支払に至るまでの間が1か月程度と短期間であるのが一因であると考えられる。相当の分量を限られた人員で確認することに支障があることも理解は示すが、このような不適正な事務処理が散見されたことは誠に遺憾である。実績報告の内容を適正に審査することができるよう、しかるべき体制を整えられたい。
また、平成26 年4月1 日財務課長事務連絡「佐渡市補助金等交付規則に係る「補助金等交付チェックリスト」の運用開始について(通知)」により、補助金の執行に当たっては補助金等交付チェックリストにより所管課長の確認を受けることになっているが、そのチェックが形骸化していると言わざるを得ない。交付要綱の規定から明らかに逸脱している事案については、補助金の返還を求めるべきである。
改善措置等の状況
提出資料や口頭による実績確認をしており、不適正な事務処理はなく、交付要綱の規定から明らかに逸脱している事案ではないため、補助金の返還にはつながらないと考えています。
今後も実績報告書のチェック体制については、限られた期間の中で適正な事務処理が行えるよう、課内の人員体制を整えていきます。
2.要綱等の見直しについて
交付要綱は、国の特定有人国境離島地域社会維持推進交付金交付要綱(平成29 年府海事第120 号)及び特定有人国境離島地域社会維持推進交付金事業実施要領(平成29 年府海事第124 号)に準じて制定されているが、国の要綱・要領は最低限の条件であり、佐渡市の経済や雇用を拡大させるためには、監査の結果で述べたとおり厳格な条件を交付要綱に盛り込むことが佐渡市にとって有益であると思料する。
また、交付要綱第12 条において最長で5年間の計画期間を認めるとしているが、複数年度に渡る補助金の交付については、事業実態を勘案し、厳格に運用し、真に必要と認められるものに限定すべきである。
改善措置等の状況
他市の状況等を調査した中では、市独自の交付要件を設けている自治体は見受けられませんでしたので、佐渡市独自の交付要件を設けるかは、今後も国からの指導を仰ぎながら他市の動向にも注視し、対応していきます。
3.補助金の交付目的について
特定有人国境離島地域社会維持推進交付金事業実施要領には、雇用機会拡充事業の趣旨が次のように記述されている。
「本事業は、特定有人国境離島地域における雇用増に直接寄与する創業又は事業拡大を行う民間事業者等に対してその事業資金の一部を補助することにより、特定有人国境離島地域における雇用機会の拡充を行い、定住、定着、移住の促進を図ろうとするものである。」
しかしながら、本監査を実施した中では、定住、定着、移住につながるのか疑問を感じる事例も見受けられた。島内への転入を増やし、島外への転出を減少させ、社会増となることが本事業の目的である。この目的に沿うように補助対象事業者を採択するように要望する。特に、複数年の事業計画を実施する事業者に対しては、その事業が社会増につながるのかを念頭において複数年採択の判断がなされることを求める。そして、佐渡で確実に生活ができるような事業と雇用の確保につながることを切望する。
改善措置等の状況
事業の趣旨に基づき、佐渡市内の雇用機会の拡充を行い、定住、定着、移住の促進を図ります。