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佐渡市認証米「朱鷺と暮らす郷」とは?
トキと佐渡の里地里山を保全する認証米「朱鷺と暮らす郷づくり」
佐渡市では2007年に、国の特別天然記念物・トキの餌場確保と生物多様性の米づくりを目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を立ち上げ、独自農法による佐渡産コシヒカリのブランド、「朱鷺と暮らす郷」を生産しています。
佐渡のトキと「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」ができるまで
1981年・佐渡に日本で最後まで生き残っていた野生のトキが全鳥保護されます。18年を経て1999年、佐渡トキ保護センターでは日本初にあたるトキの人工繁殖に成功(*)。繁殖は順調に進み、いよいよ2008年9月25日、念願であったトキの第一回自然放鳥が行われました。
27年ぶりに佐渡の空に飛び立ったトキをふたたび未来へ定着させるための環境整備、それに基づく独自農法を制度化したものが「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」です。
(* 1999年1月、中国から贈呈されたペアから誕生。)
「 朱鷺と暮らす郷づくり 認証制度」とは
1. 「生きものを育む農法」により栽培されたものであること。
2. 生きもの調査を年2回実施していること。
3. 農薬・化学肥料を減らして(地域慣行比5割以上削減)栽培された米である
こと。
4. 水田畦畔等に除草剤を散布していない水田で栽培されたこと。
5. 佐渡で栽培された米であること。
目標を上回る数のトキが自然定着。認証米を育む環境がトキを育む
朱鷺と暮らす郷 認証制度の開始を契機に、佐渡全体にトキを中心とした環境づくりを重視する米作りが広がりました。慣行米(地域慣行基準の化学合成農薬・化学肥料使用)が主だった農業から、「朱鷺と暮らす郷」認証米や、5割減減米(地域慣行基準より化学合成農薬5割減・化学肥料5割減)が主の農業へ、今栽培は変化しています。
堅調に進むトキの野生復帰。
順調に良くなっているトキの住みかとなる佐渡の水田。確かに彼らの「郷」づくりに貢献している結果のひとつに、2020年9月、島内で確認された野生のトキの個体数が挙げられます。
その推定数は458羽。これは「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」設立当時に立てられた目標数であるを上回る結果となり、目標は新たに設定され、さらなる野生復帰の推進に取り組んでいます。
「生きものを育む農法」という取り組み
多くのトキを佐渡の空に復活させた「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」。そこに定められる「生きものを育む農法」とは、いったいどのような水田づくりなのでしょうか。下の5つの取り組みのうち、どれか1つ以上を実施していることが要件です。
1.「江(水を残す深み)」をつくる
コシヒカリの根を健全に張るため田んぼの水を抜く時期があります。この時期には田んぼの水生生物たちのため水を張った側溝・「江」を設けています。
2. 魚道の設置
魚や小さな水生生物たちが田んぼと水源を自由に行き来できる「魚道」を確保しています。
3. ふゆみずたんぼ
通常水を抜く冬も田んぼに水をはる米づくりです。水中生物の土壌に対する働きを高める、「冬期湛水(とうきたんすい)」とも言われ、雪が積もる冬の間も朱鷺をはじめ生き物が暮らす環境を維持します。
4. ビオトープの設置
田んぼを中心とした生態系を守るため、作付しない田んぼも活用し年間を通じて常に水の張られた状態の池や沼を田畑に隣接して設けています。
5. 無農薬・無化学肥料による栽培
農薬・化学肥料を使わずに栽培することで、小さな生きものへの影響を減らし、より多くの生きものの生息環境を維持することができます。
そのほか、田んぼのあぜに除草剤を使わず、草刈機で刈ることが要件となっています。緑のあぜには、ミミズやバッタなどが生息でき、トキが田んぼに入れない夏期は、重要な餌場となります。また、緑のあぜが佐渡ならではの美しい景観をつくります。
また、農家は年2回、水田にすむ生きものの調査を実施しています。自らが実践した農法により、生きものの数や種類が増えたことを実感できる貴重な取り組みでもあります。